日本人はどうしてこんなに貝が好きなんだろう
ひな祭りのお膳でハマグリのお吸い物を食べたことはありませんか?
ハマグリは昔から特に女の子のお祝い事の席で食べられてきました。
それはハマグリの殻がそれぞれ対になっており、他の殻とはぴったりと合わないことから、相性のいい人と出会い、その縁が永遠に続くようにという願いが込められたことが由来です。
またアワビの煮貝が縁起物として使われてきた歴史もあります。
アワビは長寿を願う貝として、贈り物としてたいへん重宝されてきました。
貝は昔から日本人の習俗に深く関わっています。
そして貝のもつ旨味は古代の人を虜にしてきました。
現在もさまざまな貝がおいしく食べられています。
こんなふうに愛されてきた貝を使えば、グッと差のつくメニューを作ることができます。
まずは貝のおいしさの理由や地域ごとの貝の魅力を見ていきましょう。
貝は古代から人気の食材だった
日本人は古代から旨味という味覚を知っていた
日本で貝の存在がはっきりと確認されているのは縄文時代です。
「貝塚」といわれる遺跡が多数見つかっています。
社会の授業などで貝塚の名前を聞いた記憶がある人もいるのではないでしょうか。
貝塚には貝をはじめとしたさまざまな食料を食べていた形跡が残っています。
貝塚で見つかっている貝の種類は30~40種類程度。
その中でも多くみられるのはハマグリ・あさり・ヤマトしじみ・牡蠣など、今でもよく食べられている貝です。
発掘された縄文土器からは貝を煮炊きした痕跡や、貝の干物が見つかっていることから、縄文時代からすでに日本人は貝のおいしさを知っていたと考えられます。
それくらい貝のおいしさは人々にとって魅力的だったのです。
海のない内陸部でも貝を食べていた
さらに海のない地域でも貝を食べた痕跡が残っています。
これは人々が内陸地域に移動した時に持ち込んだり、物々交換品として塩などと一緒に運んでいたりという可能性を示唆しています。
縄文時代の人々が貝を煮炊きしていたのは、他の食材と一緒に貝を煮込むことで、旨味や塩味など調味料のような味わいを求めていたのではとも考えられています。
現代の私たちも貝の汁ものなどは貝の旨味がとてもおいしいことを知っていますが、縄文時代の人々は貝の旨味をすでに知っていたのです。赤貝を信州まで氷室の氷を利用しながら運んだり、海のない甲州までしょうゆ樽に漬けてアワビを運んだりとさまざまな工夫をして貝を楽しんだという話が伝わっています。現代でも、海のない山梨県でアワビの「煮貝」が名物なのは有名です。
ハマグリの人気は平安時代から
その後も貝はさまざまな形で人々の生活に関わっていきました。
平安時代には「貝合わせ」という遊びが貴族の間で流行しています。
この「貝合わせ」にはハマグリの貝殻が使われていました。
色や形が似ていても、対になっていた貝殻同士しか重ならないためです。
また貴族の遊びの一つの囲碁の碁石も材料がハマグリの貝殻でした。貴族の間でハマグリがいかに好まれていたかを示すエピソードです。
貝の養殖は室町時代から
食用としても人気の貝は室町時代になると養殖が始まったことがわかっています。
その一つが今も広島の名産である牡蠣です。
広島では室町時代に牡蠣の養殖が始まっており、石を干潟に撒き牡蠣を付着させる「石撒き養殖法」や、木などを干潟に立てて牡蠣を育成する「ひび建て養殖法」が取り入れられていました。
戦国時代には、伊達政宗が牡蠣を食べるための洞窟を用意していたり、江戸時代の俳人、松尾芭蕉の「奥の細道」では牡蠣によって栄養を補充していたという話があったりと貝にまつわる話はたくさんあります。
また人気のハマグリも室町時代に養殖が始まっています。
江戸時代には安価だった貝
江戸時代にはあさりやハマグリの値段が安かったこともあり、貝類は多くの人に食べられていました。
「日々徳用倹約料理角力取組」という江戸時代の節約おかず番付には、魚類の2位に貝料理の「剥き身切干し」が入っているほど、貝は人々に親しまれていました。
海であさりなどの貝を掘る「潮干狩り」が行楽として人気になったのも江戸時代です。
江戸時代末期には黒船で来航したペリーがホタテをアメリカに持ち帰るなど、日本の貝のおいしさは広がっていきました。
年2回あるしじみの旬をメニュー展開に活かす
しじみには冬が旬の寒しじみと夏が旬の土用しじみがあります。
寒しじみは冬に備え栄養を蓄えて土に潜っているのでコクのある味わいです。
一方、夏の土用しじみは産卵前でしっかりと身が付いているので、とても良い食感です。「土用しじみ」は土用に食べると体に良いと言い伝えられてきました。
土用しじみはカルシウムやビタミン、カリウムなどが多く含まれていて栄養価が高く、夏の暑さを乗り切るために好まれてきました。
現代は土用と言えばウナギと思いがちですが、実はしじみも土用に食べる食材の一つです。積極的にシーズンメニューに取り入れるのがおすすめです。年に2回ある旬はメニューの展開に使いやすいといえるでしょう。「期間限定」「寒しじみ」「土用しじみ」などと書いて、店内や店の外にも貼り出せばお客様の目に留まるだけでなく、季節ごとにおいしいものが食べられる店という印象を持ってもらうことができるため、こうした旬を利用する展開はリピーターを作るためのワザともいえます。
貝の魅力を活かしきる!
飲食店でも提供している所が多い貝の味噌汁や貝汁は人気の一品です。
これらの汁物が好まれるのは、旨味がとても強く味わい深いからでしょう。
貝の魅力はこの旨味です。肉や魚にはない、この旨味を活かしましょう。
昔から人々を魅了してきた、こうした貝の旨味とはどのようなものでしょうか。
貝の汁物の旨味は貝のエキスが出てくることによって、感じることができます。
この貝の旨味成分はコハク酸です。
コハク酸は酸味や苦味などが混ざり合った旨味で舌にダイレクトに伝わる強めの味わい。
それにより貝の旨味を思う存分感じることができるのです。つまり、貝そのものだけでもおいしいので、時短かつ人気のサイドメニューを増やすヒントが詰まっているのです。
あさりを美味しくする裏ワザ
身近な貝の中でも特にあさりはコハク酸を多く含んでいるため、さまざまな研究がされてきました。
それによるとあさりは採れたての状態より、調理前に少し置いておくことでさらにコハク酸を生成しておいしくなることがわかっています。
あさりは海水では酸素を吸っていますが、海から離れると体内のグリコーゲンを分解することで、コハク酸を作って生き続けているのです。
通常販売されているあさりは水から揚げてパック詰めされていることも多いですが、採れたてのあさりよりパック詰めされているあさりのコハク酸が多いという研究もあります。
とはいえ、あさりを海から離れて長い間置いておくとやがて体内のグリコーゲンが枯渇し、生成されるコハク酸の量は低下してあさりが死んでしまうため、砂抜き後はあまり長い時間放置しないほうがよさそうです。
貝の旨味の秘密
ほとんどの貝に含まれているコハク酸ですが、貝の旨味成分は他にもあり、貝の種類によって少しずつ違っています。
コハク酸のほかの旨味成分には、グリコーゲンやグリシン、グルタミン酸などがあります。
旨味が強いあさりやハマグリ、しじみなどのコクは、コハク酸であると言われてきましたが、最近ではコハク酸にプラスしてアミノ酸も含まれていることにより、深みのある旨味を感じられることがわかってきました。
例えばホタテにはコハク酸の他に、アミノ酸やグルタミン酸、タウリンなどが豊富に含まれています。
また栄養豊富な牡蠣に多く含まれているのはグルタミン酸で、これは身のかなりの部分を内臓が占めているからです。
貝の健康効果もメニューの魅力になる
身の方が多い貝と内臓が多い貝によって、含まれている旨味成分は大きく違います。
貝の旨味成分は旨味としての役割だけでなく、最近では健康効果についても期待されることが増えてきました。これをメニューに取り入れないのは損です。
貝が呼吸することによって体内で合成され、消費されていくコハク酸は、人の体内でもエネルギー代謝に関わっている成分で、肌の保湿や新陳代謝が活発になるなどの健康効果があるのではといわれています。
またしじみの旨味成分の一つであるアラニンは、肝臓の動きを助けるアミノ酸です。
オルニチンも肝臓の働きを保ち、疲労回復をもたらすと考えられています。
貝の旨味はおいしさと共に人々の健康にも貢献していることから、さらに人々を魅了していくでしょう。美肌メニュー、肝臓を守るメニュー、疲労回復メニューなど、健康の切り口でも貝を活かせますね。
人気の貝の種類と産地
アワビ
日本で食用にされているアワビはクロアワビ、エゾアワビ、マダカアワビ、メガイアワビで、特にクロアワビが最高級と言われています。
同じ仲間にはトコブシも含まれますが、サイズが小さいなどの違いがあり、アワビとは区別されていますが、これも美味しくて人気の貝です。
三重県鳥羽・志摩地方はリアス式海岸が発達していることから、昔から海女漁業が行われており、アワビの漁場として有名です。
他には岩手県や千葉県もアワビの産地として知られています。輸入ものの養殖では韓国産が増えてきて、比較的リーズナブルで味もよく、おすすめです。刺身や煮貝、ステーキなどがスタンダードですが、生クリームとの相性もとてもよく、中華風のクリーム煮はとてもおいしいので、あえてサイドメニューにして、おかわりを狙うのもありかもしれません。アワビの身の味は通年変わることなく、美味しく食べられます。ただし、肝は産卵前の真夏が一番大きく太っています。真夏を旬としてメニュー展開しても差し支えないでしょう。通説でも旬は夏ということになっています。
サザエ
サザエは刺身やつぼ焼きなどで有名な日本で代表的な貝の一つ。北海道南部から九州にかけて生息しています。
資源保護が進んでいるため漁獲量は多く、安定して流通しています。
長崎県、山口県、三重県の漁獲量が特に多く、この3県でシェアの4割を占めています。地方によっては寿司ネタや、カレーの具にするなど、メニューのバリエーションが豊かで使いやすいでしょう。
殻ごと皿に盛るつぼ焼きが、磯の香と見映えのよさで最高です。刺身なら殻を装飾に使うとよいでしょう。旬は3~7月で、ゴールデンウイークのバーベキューや、夏を感じる季節になってきたことを知らせるようなメニュー展開がおすすめで、「もうすぐ夏!」「サザエが旬です!」「サザエのつぼ焼きはじめました」など、お客様の気持ちが浮き立つようなポップはいかがでしょう。夏らしさがあり入手もしやすいため、バーベキューにもおすすめしたい貝です。
つぶ貝
つぶ貝は食感が良く、刺身や煮つけ、焼き物など、さまざまな料理で楽しめる人気の貝です。日本酒の合いの手としては気の利いた、オツな部類に入るでしょう。
寿司屋ではネタの一種として提供されており、甘みやほのかな磯の香、歯ごたえが特徴的です。
日本の主な産地は三陸沿岸や北海道で、特にえりも町や厚岸町、広尾町などが有名です。釧路ではトウダイツブやマツブをはじめとして、さまざまな種類のつぶ貝が水揚げされています。
旬は4~9月、最も身が充実しているのは春先ですが水揚げ地を変えて漁獲されており、通年流通しています。
甘辛く煮つけるだけなら手がかからないので、簡単に魅力的なメニューが完成です。見かけたらすかさず仕入れて「本日のおすすめ」に入れてはいかがでしょう。
ばい貝
日本各地で採れたため、土地によってさまざまな名前が付いているばい貝。近年は乱獲と海の汚染により、数が減少しており、都市部で見かけることが少なくなってきました。
通年流通していますが、刺身でおいしいのは晩秋から冬にかけてなので、どんどん寒くなる季節を感じさせる食材として扱ってもよいでしょう。
大ぶりのものは食感が良く、刺身にして食べられることが多く、小ぶりのものは煮つけや酒蒸しにして食べられています。香りがよく、味が濃いのが魅力の貝なので、薄口しょうゆで時間をかけすぎず煮るのがおすすめです。小ぶりのほうが高値になる傾向があります。
牡蠣
はるか昔から好んで食べられてきた牡蠣は、海の岩から牡蛎落とすことから「牡蠣」という名前が付いたと言われています。
産地により、殻の大きさや身の大きさに違いがあり、それぞれの産地で積極的に拡販されている人気の貝です。
牡蠣にもいくつか種類があり、その中でも真牡蠣と岩牡蠣が多く出荷されています。
それぞれの牡蠣により、育てる期間や出荷する時期が違うのが特徴です。
真牡蠣の産地は太平洋側や瀬戸内海が多く、1~3年かけて養殖されています。
旬は冬で、旨味が凝縮された濃厚な味わいです。
一方、岩牡蠣の産地は日本海側が多く、天然のものと養殖のものがあります。
旬は夏で、大きさや厚みがしっかりとあり、ジューシーです。
北海道や宮城県、岡山県、広島県で多く生産されています。和・洋・中と幅広く使える貝で、近年では旬に急速冷凍されたものがあるので、バラ凍結のものを使うのも賢いやり方です。牡蛎のシーズンは広く知られているため「牡蛎鍋はじめました!」「むきたての牡蛎フライはじめました」など、冬のおとずれを感じるメニュー展開にぴったりの貝です。ヨーロッパでは月名の語尾にrのつく月が旬という覚え方をしています。
ホタテ
ホタテはイタヤガイ科の2枚貝で、広く流通している人気の貝です。
貝柱は特に人気で、生でも加熱してもおいしく、刺身や焼き物、揚げ物などさまざまなメニューで使われています。
ホタテは低い水温を好むので、能登半島より北の日本海や、千葉県より北の太平洋沿岸、千島列島などに生息しています。
養殖で生産されるほか、稚貝を放流して成長したものを獲ることも行われており、北海道や青森で多く水揚げされています。ヒオウギガイやイタヤガイもホタテの仲間で、中でもヒオウギガイは貝殻の色がカラフルで綺麗なので目を引くメニュー作りには最適です。ホタテも旬が年2回ある貝で、初回から真夏の5~8月、冬から早春の12~3月。ヒオウギガイは晩秋から早春の11~3月。イタヤガイは通年流通しており特に旬はないといわれていますが、あえて言えば夏に産卵するため、春から初夏にかけてが旬といってよいでしょう。いずれも旬があまり知られていない貝なので「ホタテの旬がきました!」など、今が旬でおいしいですよ、というアピールをするのがおすすめです。
ハマグリ
濃い旨味で人気のハマグリが多く水揚げされるのは茨城県から千葉県に続く鹿島灘や千葉県の九十九里浜です。
「その名は桑名の焼き蛤」で有名な、地蛤と呼ばれる内湾性のハマグリは現在、数が激減しており、ハマグリよりも外洋性の「チョウセンハマグリ」が一般的にハマグリとして流通しています。
「チョウセンハマグリ」は漢字で書くと「汀線ハマグリ」で、古来より日本に生息する種です。ちなみに輸入物のハマグリは「シナハマグリ」です。
島根県益田では沖で水揚げされるチョウセンハマグリを「鴨嶋ハマグリ」としてブランド化しています。実は外国産ではないチョウセンハマグリ、胸を張って「国産」と表示できます。旬は2~4月。ひな祭りの頃が一番おいしい時期ですね。汁物や酒蒸しが一般的ですが、ワインとバターを使うのも人気です。旬の時期がやや短めなので「期間限定!」でハマグリメニューを展開するのがおすすめ。韓国ドラマで「ガソリン焼き」を見た方もいるかもしれませんが、ガソリンを扱うのは危険なのでおすすめしません。
あさり
1980年代までは各地の砂浜で潮干狩りをすればあさりが多く獲れていましたが、現在は干潟の埋め立てや水質汚染、温暖化などにより数が減っています。あさりが獲れるのは太平洋側の浅瀬の砂地で、北海道から九州まで幅広く生息しています。特に漁獲量が多いのは愛知県と静岡県です。
あさりの旬も、しじみやホタテと同じように年2回あり、産地にもよりますが、だいたい2~4月、9~10月の春と秋で、産卵前に栄養を蓄えるので身がプリッと太ります。
汁物に使ったり、酒蒸しにしたりと日本人にはおなじみの貝ですが、パスタも人気ですね。パスタメニューのボンゴレにも年に2回の旬があるということなので、イタリア料理店でもシーズンメニューを増やせます。
あさりは意外とクリーム系とも相性がよく、大粒のむき身を数粒ベシャメルでまとめてパン粉をつけ、サッと揚げたりしても喜ばれますが、いずれも「旬です!」とお客様に知らせて食欲をそそることで、注文へつなげたいですね。
ホンビノス貝
外来種の貝です。アメリカでよく食べられていたものが、2000年前後から日本でも繁殖するようになったと言われています。和名のホンビノスはマルスダレガイ科ビーナス属に分類されていたことから付いた名前で、漢字では「本美之主貝」と書きます。
関東で多く水揚げされ、特に千葉県では千葉ブランド水産物として認定されています。元からいたあさりと競合しないため、外来種ですが、今では歓迎されています。
ホンビノス貝はあさりやハマグリと同様の二枚貝です。大あさりと呼ばれることも。
風味が濃く、肉厚で食べ応えがあるのが特徴で、旬は3、4月で春の貝です。
ハマグリのように塩分が強いので、味付けする時は気をつけます。ハマグリと同様に使えますが、ハマグリよりぐっと安価なので仕入れを検討してみてはいかがでしょうか。ちなみに、アメリカでクラムチャウダーに使うのはこのホンビノス貝です。「春は本美之主貝の旬です!」「にんにくバターしょうゆがおいしい!」など、お客様がまだあまり慣れていない貝の美味しさを積極的にアピールするのがよいでしょう。
しじみ
日本に生息しているしじみはヤマトしじみ、セタしじみ、マしじみの3種類で、しじみの漁獲量の99%以上がヤマトしじみです。
ヤマトしじみは淡水と海水が混合する水域の汽水域で水揚げされます。
しじみの産地は島根県の宍道湖と青森県の十三湖と小川原湖で、どちらも汽水湖なのが特徴です。水から出して、乾燥を防ぎながら冷蔵庫で保存すると旨味が増すことがわかっているので、砂抜きをしたら一晩冷蔵庫で保存するとよいでしょう。また、冷凍しても味が落ちないので、安い時に仕入れて砂抜きしてから冷凍するのもよい方法です。しじみは意外とアジアンな食材で、台湾ではにんにく風味のしょうゆ漬け、韓国では茹でてむき身にした大量のしじみをコチュジャンだれで和えたものを葉野菜で包んで食べたり、しじみビビンバにしたりします。日本では汁物や佃煮が人気です。佃煮を何かと合わせてオリジナルメニューを作るのも美味しそうです。旬は寒の時期と土用の時期の年2回。積極的においしい時期をアピールしましょう。
ムール貝
ベルギーにムール貝専門レストランがあるほど、ヨーロッパ各地の料理で親しまれている貝です。日本でもイタリア料理やフランス料理が人気となってからはよく食べられるようになりました。黒っぽくて大きな貝殻が存在感のある貝です。
養殖も盛んに行われており、フランスのモンサンミッシェル産、カナダのソルトスプリングアイランド産は高級品として知られており、ほかにも海外産のものが多く輸入され流通しています。
日本では宮城県が「三陸ムール貝」としてブランド化しています。日本では牡蠣の副産物として出荷されることが多いので、広島からも出荷されています。
旬は9~12月で、ヨーロッパでは月名の語尾にerのつく月が旬という覚え方をしています。ニンニクを効かせたワイン蒸しなどが人気で、シーフードパスタやパエリアの具に、見映えもよく重宝します。手早く簡単に調理できて価格が手ごろなので、サイドメニューに加えてみてはいかがでしょうか。9月に入ったら「ムール貝の季節になりました!」と書き出して「ムール貝フェア」などで盛り上げるのもよいのではないでしょうか。
まて貝
細長い独特の形をした二枚貝です。
身は肉厚でやわらかく甘みがあるので人気があります。
瀬戸内海や東京湾など大きな内湾の干潟や浅い泥の海に多く生息していましたが、現在は干潟の干拓などの環境破壊により流通量が減り、あまり見られなくなりました。
旬は冬から春にかけての寒い時期。主に大分県や熊本県、山口県で水揚げされています。見かけたら酒蒸しや酢の物などにすると、珍しくて人気になるでしょう。中国では日本よりも好まれているようで、まて貝をさっと茹でて乾燥させたものは中華料理の高級食材となっています。遠浅の長い海岸線や干潟のある韓国では、よく他の貝と混ぜて貝焼きに使われますが、シンプルに焼くだけでもなかなかおいしい貝です。生は若干水っぽさがあるので、酢の物にする時はさっと塩茹でします。入荷したら「今が旬! レアなまて貝入荷しました!」などと店の外に貼り出して、珍しさで集客するのもおすすめです。
みる貝
寿司ネタで人気のみる貝と呼ばれている貝は、マルスダレガイ目バカガイ科ミルクイで、主に水管部分を生食します。
主な産地は愛知県の三河湾や瀬戸内海、東京湾ですが獲れる量が非常に少ないため、品物によってはアワビより高価な高級食材となっています。
そのため最近は韓国などからの輸入のものが多く出回っています。
コリコリとした食感と甘みのある味わいが人気で、特に江戸前寿司には欠かせないネタです。意外なようですが乳製品との相性もよく、歯ごたえを活かしたバター焼きなどもおすすめです。また、水管以外はよく加熱すれば食べられるので、煮物・和え物・炒め物・汁物などに活用できます。
旬は冬から春にかけての寒い時期で、その時期が一番おいしく食べられるので、入荷したら「本日みる貝入荷しています」などと貼り出すと、日常的にはあまり見かけない貝になっているため、好きな人は引き寄せられるはずです。
あおやぎ
北海道から東京湾、瀬戸内海などに生息しており、漁獲量が多いのは千葉県船橋や木更津などです。あおやぎという名前が一般的ですが、実は正式な名称は「バカガイ」です。寿司ネタとして提供する際に客にバカガイという名前で出すことがはばかられたため、本来は剥き身の名称のあおやぎが使われるようになりました。
あおやぎという名称の由来は千葉県市原市の地名「青柳」で、バカガイを集めて出荷する場所だったため、この名称がつけられたと言われています。
秋から春にかけてが旬ですが、イメージとしては早春の貝で、これもひな祭りのシーズンをイメージさせますね。寿司ネタや辛子酢味噌和えとしてよく食べられるほか、小柱と呼ばれる小さな貝柱を牡蛎揚げなどにします。牡蛎揚げは三つ葉と合わせるのがおすすめ。小柱の牡蛎揚げはツウ好みなので、足の部分よりも、小さな小柱のほうが集客力のあるメニューになるかもしれません。
鳥貝
寿司ネタとして人気の鳥貝は北海道を除く各地に生息しています。
ただ日本産は少なく高級品です。
以前は日本各地で水揚げされていましたが、海水温の影響が大きく猛暑の夏には死んでしまうなど環境の変化に弱いため、水揚げ量が大きく減っています。
その問題に向き合って鳥貝の生産に取り組んできたのが、京都府農林水産技術センター海洋センターです。
大型の鳥貝を安定供給するために鳥貝の稚貝を生産、育成する技術を開発しました。
その稚貝を育てた鳥貝を「丹後とり貝」としてブランド化し販売しており、旬は6・7月。それ以外の産地では4・5月となっていて、元々のイメージとしては春の貝といえるでしょう。寿司ネタのほか、刺身や酢味噌を添えてもオツなものです。「本日鳥貝入荷しています」などと貼り出すと、貝好きなお客様の目に留まるはずです。
ホッキ貝
ホッキ貝の本来の和名はウバガイです。
日本海側では富山県より北、太平洋側は茨城県から北の冷たい海に生息しています。
漁獲量日本一は北海道の苫小牧市で、秋にはホッキ祭りが開催されます。
旨味成分をしっかり含んでおり、寿司や刺身をはじめ、シチューやバター焼き、炊き込みご飯などがおすすめです。身がプリッとして、生でも加熱してもおいしい貝です。産卵する6月頃が禁漁で資源保護が図られています。旬はおおむね1~4月ぐらいとなっています。
赤貝
赤貝は寿司ネタや煮物としても人気の貝です。
きれいな朱色が映えること、かつては東京湾で多く獲れたことから江戸前寿司の定番で、歯ごたえや甘みもおいしくよく食べられています。
宮城県や愛知県、三重県などで多く水揚げされていますが、干潟の埋め立てや水質の悪化、海水温の上昇などにより全体的に漁獲量が大きく減少しています。赤貝にそっくりでサイズの小さいサルボウは甘辛く煮つけるとおいしい貝ですが、日本では絶滅寸前で、韓国からの輸入に頼っている状況です。
宮城県名取市閖上で獲れる赤貝は「閖上赤貝」としてブランド化しており、寿司店などでは高い価格で提供されています。
旬は12~3月ぐらいで、冬から初春にかけて旨味が強くおいしい時期春を感じさせる貝なので、「赤貝入荷しました!」「赤貝、早春が旬!」などと貼り出すとよいでしょう。むき身にしてスライスした製品などもあり、刺身や海鮮丼などに便利です。
貝の生産は養殖が主流
海に囲まれた島国の日本は、古代から貝を食べるなど多くの水産資源に恵まれてきました。
しかし現代は多くの貝の生産が養殖を主流として行われています。
このように天然の貝が手に入らなくなったのはなぜでしょうか。
一つは乱獲です。
日本にはたくさんの貝が生息しており、各地で好んで食べられてきましたが、たくさんいるからこそ獲れるだけ獲ってしまうという時期がありました。
そのため小さな貝まで獲ってしまうことで、資源が枯渇したのです。
もう一つは干潟の開発です。
貝が多く生息している干潟が埋め立てられたことにより、日本各地で貝が激減しました。そのため資源保護だけでは難しくなり、養殖が盛んに行われています。
養殖や輸入でも貝の美味しさは変わらない
現在はほとんどの貝が養殖で生産されています。
養殖で安定して貝を生産することにより、天然資源の枯渇を防ぎつつ、多くの需要を満たすことができるようになっています。
牡蠣やアワビ、ホタテ、あさりなどが、それぞれの産地で養殖されていますが、多くの研究を積み重ねることでよりおいしい貝を生産できるようになってきました。
また、アワビをはじめ、みる貝などおいしい貝には養殖された輸入物も増えましたが、輸入物であっても貝はおいしい食材です。上手に仕入れ値を抑えて、季節感あふれるおいしい貝のメニューを増やし、お客さんの目を引いていきましょう。お酒が好きなお客様には、貝のメニューも好まれます。おいしいお酒があるなら、なおさら、貝のメニューを増やすのがおすすめ。また、貝はカジュアルなワインにもよく合う食材です。和・洋・中を問わず、人気のメニューを開発できることでしょう。
料理ジャンル別おすすめ貝料理
和の貝メニューは比較的シンプル
世界中で人気がある貝料理ですが、それぞれの土地で人気の貝料理があります。
日本では貝を刺身にしたり、汁物で食べたり、殻ごと焼いて食べたりと貝そのものをダイレクトに味わう料理が人気です。
あさりやしじみの味噌汁は、体にも良いと言われ普段から食べている人も多いのではないでしょうか。
また貝は刺身や寿司ネタとしても使われるものが多く、貝柱と身は別にして食べるなどこだわりが多くあります。
アジアでも貝は大人気
日本だけでなくアジア全体で貝料理は人気です。
中国では湯引きにしてタレで食べたり、炒め物やスープにしたりして、さまざまな貝を食べています。
韓国では何種類かの貝を網焼きする貝焼きは若者にとても人気の定番メニューです。ちょっと珍しいものでは慶尚南道の河東(ハドン)では蟾津江(ソムジンガン)という大きな川で獲れる天然のとても大きな牡蛎「ポックル」が有名で、川岸の牡蠣小屋で焼き牡蠣にして味わえます。
他にも韓国では良質なハマグリやあさりを焼いたり、むき身をお粥に入れたりと、地域によって名物料理があるほか、しじみも獲れるため、ビビンバやチヂミにも使われます。
日本でも人気のあるスンドゥブチゲはあさりを入れると美味しさが格段に上がります。
ベトナム料理でよく食べられるフォーは貝の味わいが合う料理の一つ。
ハマグリなどの貝を使ってフォーを作ると、貝の旨味とあっさりしたスープでおいしく食べられます。
ヨーロッパ人も貝が好き
アジアとはまったく違う貝料理が味わえるのがヨーロッパです。ベルギーにはムール貝専門のレストランがあるほど、人々に親しまれていますし、牡蛎のシーズンが近づくのを心待ちにする人たちもいます。
日本でムール貝をよく食べるようになったきっかけはイタリア料理店の影響や、パエリアに乗ったムール貝という人もいるでしょう。
魚貝のアクアパッツァや貝のアヒージョなど、お店で提供すれば人気メニューになるかもしれません。
さまざまな料理と組み合わせることで、無限に広がる貝のおいしさをぜひお店のメニューに生かしましょう。牡蛎をたっぷり乗せたピザは美味しくて見映えも最高ですし、シーフードパスタに殻ごとのムール貝を入れると見た目が豪華になります。貝はニンニクやオリーブオイル、バター、生クリームなどとの相性も抜群です。
貝の加工品を使ってコストカットと時短を実現
貝をお店の料理に取り入れようと考えた時、どのように仕入れるかは迷う人も多いのではないでしょうか。
市場などにも出回っていますが、わざわざ市場に行って自分で目利きをして選ぶというのは時間と手間がかかります。
また下処理の時間なども思った以上にかかることを考えると二の足を踏む人もいるかもしれません。
そこでおすすめなのが食材の仕入れECサイトで扱っている冷凍の貝や、貝の加工品です。
貝料理の手間の一つの砂抜きなどが終わっている加工品や、剥いてあるものを使えば、調理時間を大幅にカットすることができます。
ECサイトで簡単に仕入れられる貝の加工品
また、ECサイトではさまざまな貝の加工品を取り扱っています。
殻付きの牡蠣やホタテ、つぼ焼きにできる殻付きのサザエなど、多くの貝が揃っているので便利です。さらにボイル済みの冷凍ムール貝や、ボイルホタテ、むき身、衣が付いた牡蛎フライなどの半調理品を使うことで、より短時間で調理ができます。
また冷凍で仕入れをすることで無駄が出なくなり、フードロス対策にもなります。
取り扱っている貝の種類も豊富なので提供する貝料理の幅が広がり、お店のメニューを増やすことも可能です。
よりおいしい貝料理を提供して、お店を盛り上げていきましょう。
まとめ
日本人は古来より多くの貝を食べ、その旨味を味わってきました。
貝に魅了された人たちはさまざまな工夫を凝らし、おいしい貝を食べるために漁法を考えたり養殖に取り組んだりといろいろな努力を重ねていますが、乱獲や干潟の埋め立てなど、天然物を味わうことが難しくなりつつあります。
しかし現在は各地で養殖に力を入れ、その土地の名産品になっているケースもでてきています。
貝はさまざまなメニューを開発できる、とても便利な食材
そのおいしさと季節感を生かした料理をお店に取り入れることで、お店のメニューの幅を広げ、お客様に楽しんでいただきながら利益を上げていくことができるのではないでしょうか。
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