用途に合わせて使い分けたい!種類豊富な豚の品種

日本人はどうしてこんなに豚肉が好きなんだろう

日本では弥生時代の遺跡から出土するほど、食べられていた歴史が古い豚肉。
その後、肉を食すことは稀になったものの、17世紀に海外から肉食の習慣が持ち込まれてからは、当時の薩摩藩や南西諸島、琉球などで細々と飼育が続けられ、その地ごとに特色のある豚肉料理が発展しました。
本格的に庶民が豚肉を食べるようになったのは明治維新以降のこと。
以来さまざまな種類の豚が飼育されるにつれ、数多くの銘柄豚が生まれ、多くの人に愛される食材となっています。

部位によって全く違った味わいを感じることのできる豚肉は、煮てよし、揚げてよし、焼いてもよしの食材であり、さまざまな料理で楽しむことができます。
海外の料理に加え、とんかつなどの日本で生まれた料理もあり、非常にバラエティ豊かな料理に向いている食材です。
日本人が好きな豚肉にはどんな種類があり、それぞれどういう特徴があり、どのように食べるのが向いているのかについて解説します。

世界に数多く存在する豚の品種

もともと豚は、野生のイノシシを飼育することで長い年月をかけて家畜にした動物です。
何でも食べるため餌を確保するのが容易であることや、多産で人になれやすいため飼育がしやすかったことが、家畜となった理由でもあります。
そうして家畜となった豚にはさまざまな品種があり、現在世界中で育てられている豚の品種は30種類ほどだといわれています。
その中で代表的なのは6種類なのですが、その6種類の豚が純血種として市場に出回ることはほぼなく、交配したものが育てられ、精肉用として出荷されています。
ここでは現在交配に使われるメインの3品種についてご紹介します。

大ヨークシャー種

イギリスのヨークシャー州が原産の品種で、大型の白い豚です。
ヨークシャー州に住むコーリング兄弟により、在来の豚に中国種、ネアポリタン種、レスター種などが交配され、1870~1880年頃までに固定したといわれています。
赤肉の割合が多く、繊維の細かい肉質を持ち、精肉用にも加工用にも利用されています。
また、三元豚のかけ合わせにもよく使われることで知られています。

ランドレース種

デンマークが原産の品種で、デンマークの在来種に大ヨークシャー種をかけ合わせ、生まれた大型の白い豚です。
耳がたれていて身体が長いのが特徴のひとつで、早熟で繁殖しやすいことから、三元豚の交配をするときなどに使う雌系品種として数多く育てられています。
脂肪が薄く、赤みが適度にあることから、ハムなどに加工するのに向いています。

デュロック種

アメリカが原産地の品種で、赤褐色をした豚です。
原種ははっきりしていないものの、ニュージャージー州で飼育されるジャージーレッドと、ニューヨーク州のニューヨークレッドをメインに、赤色バークシャーなどが入り、1880年代に本格的に品種改良が行われた結果、1885年に固定した品種です。
大型に近い体は丈夫で、穏やかな性格の豚で、肉質がよい上に肉付きも良く、雄系の品種として、三元豚の掛け合わせに使われることの多い品種です。

三元豚とは

豚肉を購入するときによく見かける「三元豚」とは、どんな豚のことを指すかご存知でしょうか。
一見、ブランド豚の名称のようですが、実はそうではありません。
実はかごしま黒豚やあぐー以外の銘柄豚の多くが三元豚であり、普段何気なく食べている豚肉も三元豚かも知れないのです。

3つの品種をかけ合わせた豚=三元豚

三元豚は3つの品種をかけ合わせて生まれた豚のことをいい、別名を「三元交配豚」といいます。
飲食店や小売店などで、ブランド名のように商品に記載して販売していることもあり、銘柄名と誤認されやすいのが現在の状況です。
しかし、3つの品種の良いところを引き出せるように交配を行い、おいしい豚肉をリーズナブルに食べてもらえるようにと三元豚は生まれました。
これによりバランスのとれた質の良い豚肉を安定して提供できるようになったのです。

なぜ三元豚は品質が高いのか

豚は、純粋品種として育て続けると、病気をしやすくなってしまったり、肉質にばらつきが出るようになったりすることが出てきます。
それに対し、3つの品種を掛け合わせることで短所はカバーされ、長所を生かした肉質の豚を生み出すことが可能になります。
そして、それは豚肉の安定供給にもつながり、コストを下げることが可能になるため、おいしい豚肉を安く提供できることにつながっていきます。
三元豚、と名のつくものは、品質の良い豚肉を選ぶ上での指標になるといえるでしょう。

三元豚に使われている品種

これまで紹介してきたように、日本では主に6種類の豚が育てられていますが、三元豚に使われる主流の組み合わせは、「LWD」といわれています。
大ヨークシャー種の雄とランドレース種の雌を交配した子の雌にデュロック種の雄を交配したもので、これが日本に出回っている豚肉全体の7~8割を占めるといわれています。
赤身と脂身のバランスの良さが特徴の大ヨークシャー種に多産であるランドレース種を交配し、そこにきれいなサシの入るデュロック種を交配することで、日本人好みで質がよく、安定供給が可能な豚肉が生まれます。

もうひとつのブランド「SPF豚」

精肉店や小売店などで豚肉を購入するときに、「SPF豚」の記載があるものを手にすることもあるのではないでしょうか。
「SPF豚」のことを「無菌豚」と呼ぶ場合がありますが、SPFは「特定の病原体を持たない」ことを意味する「Specific-Pathogen-Free」の頭文字を取ったもので、妊娠末期の母豚から子宮を切断したり、帝王切開をする形で無菌的に取り出した子豚を種豚とする方法のことをいいます。
そのため「無菌豚」と呼ばれても、やはり芯までしっかり加熱調理する必要があります。
病原体を持たない健康な豚を育てることは、養豚農家の経営を安定させることにもつながり、食の安全を守ることにもなります。

無菌状態で生まれた子豚を育てるのには、清潔な設備や厳しい防疫の管理に関する基準をクリアする必要があります。
SPF豚は、徹底した管理と最新の飼育技術のもと、抗生物質などを使用することなく、定期的な検査で健康であることを証明された豚なのです。
SPF豚は筋肉のキメが細かく、風味豊かで保水性に富んでおり、特有の臭みがなく、脂身が上質であることから、豚肉が苦手な方にも喜んでもらえるものになっています。

銘柄豚を名乗るための条件

日本で育てられている銘柄豚には数多くの種類がありますが、銘柄豚を名乗るためには一定の規格に準じていなければなりません。
安定して一貫性と付加価値のある豚肉で、東京食肉市場で高い評価を継続的に受けていることが条件となりますが、他にもさまざまな条件が揃わないと銘柄豚として認めてもらうことはできません。
また、豚の飼育についても厳しい決まりがあり、きちんと管理された大麦主体の栄養バランスの良い餌を与えるだけでなく、豚にとって理想的な、飼育に適した清潔で快適な環境で育てることや、成豚になるまで190日以上ゆっくりと時間をかけて育てること、そしてその中から選びぬかれたもののみが銘柄豚として商標登録され、販売されます。
実際に銘柄豚として販売されるのは、日本国内で飼育されている豚のうちの1割に満たない数で、その条件の厳しさが分かります。

その数約400種!その中から主要な銘柄豚をご紹介

日本で販売されている銘柄豚は約400種あるといわれていますが、その中でも肉質が良いことで知られる主要な銘柄豚があります。
その特徴や部位によってどのような料理に向くかを覚えておくと、実際に料理に活用する上で非常に役立ちます。

かごしま黒豚

日本の銘柄豚の中でも古いルーツを持つ銘柄豚が、このかごしま黒豚です。
400年前、島津家久により琉球から持ち込まれたのがそのはじまりといわれ、徳川斉昭公や西郷隆盛なども好んで食べたといわれています。
明治初期には在来の黒豚に、イギリスからバークシャー種を導入して交配し、品種改良が進んでいきました。
かごしま黒豚は、繊維質の細かい肉を持つバークシャー種にさつまいもを添加した餌を60日以上与えます。
黒豚がこの餌を食べることで、さっぱりとした味わいや程よく引き締まった肉質が生まれます。
出荷までの日数も長く、230日~270日と、他の一般的な豚の1.2~1.5倍の日数をかけて育てます。
昭和30年代には経済効率の良い白豚が導入されたことで、黒豚は飼育数が激減してしまいましたが、鹿児島県は「量より質が重んじられる時代が必ず来る」と、黒豚の飼育振興を行いました。
それから60年ほどの時を経て、鹿児島の黒豚は非常に高い評価を受け、最も有名な銘柄豚となりました。
かごしま黒豚は、歯切れがよくてやわらかく、他の豚肉と比較すると旨みや甘みにつながるアミノ酸の含有量が非常に多いため、しっかりとした旨みがありながら、さっぱりとした食べ心地なのが特徴です。
きめ細かで程よく脂肪の付いたロースはとんかつや豚しゃぶに、濃厚な味わいが楽しめるバラ肉は煮込み料理に、しっかりした食感と深いコクが楽しめる肩ロースは生姜焼きなどにするのがおすすめです。

あぐー

あぐーは沖縄県の銘柄豚です。
沖縄県の在来品種のアグーを父とし、西洋種の母豚を交配したもののことを、ひらがな表記で「あぐー」と呼びます。
父親のアグーは身体が小さい黒豚ですが、多産である西洋種の母豚から生まれるあぐーは成長すると身体が大きくなります。脂身は父であるアグーより少なく、程よい脂肪分があるのが特徴です。
生育期間は240日と長く、その間ハーブなどを加えたバランスの良い飼料を食べて育ちます。
あぐーは低コレステロールでくさみが少なく、とろけるような脂身と豊富なグルタミン酸からくる濃厚な旨みがあり、ジューシーで甘いのが特徴です。
火を加えると、とろりとやわらかい口当たりになるバラ肉は角煮や沖縄料理のラフテーのような、じっくりと時間をかける煮込み料理に、程よくのった脂身に凝縮したうまみのあるロースはしゃぶしゃぶやステーキに、赤身肉に網目状の脂が入った肩ロースは濃厚なコクがあるので、焼肉にするとおいしく楽しむことができます。

和豚もちぶた

和豚もちぶたは、群馬県渋川市にあるグローバルピッグファーム株式会社(以下GPF)が手掛ける銘柄豚で、日本で一番の出荷量を誇る銘柄豚です。
生育している地域は特に限られておらず、北海道から九州地方まで日本全国にある80の農場で育てられています。
GPFではアメリカやカナダ、ヨーロッパなどの豚を徹底的に調べ、祖父母と父親にあたる原種を選抜。
和豚もちぶたは、こうして選抜された3つの品種をかけ合わせて生まれた、いわゆる三元豚にあたります。
種豚から生育の管理を行い、選りすぐった個体のみがその血筋を残すことができるという厳しい選抜基準があり、選抜された個体は、ストレスがかからないよう細心の注意を払って育てられます。
とうもろこしと大豆ミールを主体とした、ビタミンやミネラル類もバランスよく配合された飼料を与えることが、あっさりとした味わいの脂身につながります。
ロースや肩ロースはゆっくりと火を入れるような料理にしても固くならず、冷えてもやわらかくジューシーな味わいが楽しめます。
赤身の部分にも程よくサシが入り、しっかりとしたコクと旨みが楽しめます。
とんかつやしゃぶしゃぶはもちろん、ローストポークなどの料理にも向いています。

TOKYO X

TOKYO Xは北京黒豚とバークシャー種、デュロック種を基礎として改良した合成種という、日本で始めてのタイプの豚です。
三元豚の交配とは違い、TOKYO X同士をかけ合わせた純粋種で、おいしさと安全性を追求して生み出されました。
遺伝子組換えをしないとうもろこしや大豆がメインの配合飼料を与えて育てますが、TOKYO Xを飼育している農家は都内外でわずか24戸しかないため、大量生産が出来ないことでも知られています。
北京黒豚のきめ細かな肉質と上質な脂肪、バークシャー種の上質な脂肪とその歯切れの良さ、デュロック種の筋肉脂肪の多い特徴を持ち合わせたTOKYO Xは、繊維が細かく、きれいな霜降りが入り、ジューシーでやわらかです。
舌触りもなめらかで口当たりがよく、豚肉特有の匂いは少なく、鼻腔に抜ける甘い香りやさっぱりとした脂肪分とさわやかな旨みを感じることができます。
脂肪の融点も低いため、口の中でととろける脂の甘みが一番の特徴です。
ロースや肩ロースは、そのままシンプルに焼いて食べるのはもちろん、焼肉やしゃぶしゃぶに、バラ肉はその甘みのある脂身を楽しめる野菜の肉巻きなどにするのもおすすめです。

海外生まれの輸入ブランド豚

日本で生まれ育った銘柄豚以外にも、ブランド豚として知られている豚がいくつかあるのをご存知でしょうか。
近年流行しているスペインのイベリコ豚や、中国の梅山豚、ハンガリーのマンガリッツァなど、さまざまなものが輸入されています。
日本の銘柄豚とはまた違った個性や味わいを持つ輸入ブランド豚もまた、新たな選択肢として注目されています。

イベリコ豚

スペインの中でも主にイベリア半島の中央部から南部にかけて、スペイン西部からポルトガル東部で育つ黒豚です。
脚と爪が黒いことから、スペインでは「パタ・ネグラ(黒い脚の意味)」とも呼ばれます。
よく、イベリコ豚はどんぐりを食べて育った豚のことといわれますが、実はそれだけではありません。
イベリコ豚は与えられた飼料や血統、さらに放牧期間の環境や体重増加量によって3つにランク分けがされています。
最高級のものを「デ・ベジョータ」、次に「デ・セボ・デ・カンポ」、最後に「デ・セボ」と分けられ、それぞれタグをつけて販売しています。
デ・ベジョータは60日以上どんぐりの樹が植えられた放牧地でどんぐりや自生する植物を食べて育ち、穀物飼料を与えずに育ちます。
デ・セボ・デ・カンポは最低60日の放牧の間どんぐりや自生する植物を食べますが、穀物飼料も与えられて育ったものです。
デ・セボは穀物飼料のみで育ったもので、どんぐりは食べていません。
イベリコ豚は肉質が良く、さらりとした脂肪分とコクのある甘みが特徴です。
脂肪にどんぐりの実を食べたことに由来するオレイン酸が多いことで知られていますが、餌や飼育法により変わるため、必ずしもその特徴を持っているとは限りません。
生ハムやチョリソーといった加工品にされるだけでなく、現地ではステーキやローストポークなどにされて親しまれています。
脂肪分がしつこくなく独特の匂いがないため、薄切りにしてしゃぶしゃぶなどにしてもおいしく食べることが出来ます。

マンガリッツァ

マンガリッツァはハンガリー固有の希少種で、飼育数が激減したため2004年には国宝に指定された豚です。
2017年には5万頭ほどまで飼育数が増えていますが、この豚を輸入して北海道十勝地方で飼育し、2018年から販売する会社が現れたことで一躍有名になりました。
北海道十勝地方はハンガリーと緯度が近く、自然環境が似ていることに着目し、十勝平野の自然の中でハンガリーと同じ伝統的な自然放牧で豚を飼育しています。
飼育しているマンガリッツァは3つの系統があります。
最も原種に近い「ブロンドマンガリッツァ」、ブロンドと多品種をかけ合わせて生まれた「レッドマンガリッツァ」、絶滅したとされるブラック系統とブロンドをかけ合わせた「スワローベリーマンガリッツァ」がその3つです。
系統ごとの自然交配を行うことでこれらを維持し、育生しています。
広々とした自然の中で、十勝産の大豆や小麦を主体にしたオリジナルの配合飼料を食べて育った豚は、霜降りが多くとろけるような脂を持ち、赤身は濃厚な味わいになります。
マンガリッツァは肩ロースが最上とされ、濃厚でコクのある赤身と融点の低いとろけるような脂が楽しめます。

梅山豚

梅山豚(めいしゃんとん)は中国原産の豚で、太湖豚系の原種豚を指します。
かつてはパンダとともに日本に贈られたほどの希少種だった豚で、西遊記に登場する猪八戒のモデルとなったともいわれています。
1989年に茨城県の塚原牧場が雄2頭、雌10頭を初めて輸入しましたが、翌年には中国政府が輸出禁止品目に指定したため、新たに輸入されることはなく、現在は農林水産省と塚原牧場が生育している100頭ほどしか日本にはいない希少な豚です。
塚原牧場から出荷されている梅山豚は、梅山豚の雌とデュロック種の雄を交配したF1で、現在は一般消費者と飲食店の両方に直売のみで販売を行っています。
梅山豚は肉に入るサシが多いと言われるバークシャー種よりもさらに多く、上品な脂身の甘みと、やわらかな肉質でジューシーな味わいが特徴です。

まとめ

さまざまな国にルーツのある数多くの品種を交配し、それぞれのおいしさを最大限に活かす工夫をした日本の豚肉は、日本の食卓を彩るさまざまな料理に活用しやすいだけでなく、繊細でありながら力強さの感じられる味わいが、いろいろな国の料理に利用してもその個性をしっかりと発揮してくれます。

海外にルーツのある珍しい豚肉も、その希少性に加え、その豚にしかない味わいを感じることのできる料理として提供すれば、店のスペシャリテとなる可能性があります。
信頼できる仕入れ先を見つけることで、これまでと同じ料理がグンと格上げされたり、新たなメニューを作るきっかけになることもあるでしょう。
さまざまな豚肉を上手に使い分けることで顧客の満足度を向上させるだけでなく、効率の良いコストダウンの方法も見つけられるのではないでしょうか。
ぜひBtoB eSmartでベストの仕入先を見つけてください。BtoB eSmartで、食材との素晴らしい出会いがありますように。

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